手指衛生の向上は感染対策にとって良いことですが、手荒れの心配があります。手荒れは洗剤や手指用の消毒剤、湿度や摩擦などの環境的なものや、性別、年齢、アトピー素因などの個人的な要因で起こります。医療従事者、美容業、主婦、飲食関係など、頻繁に手洗いの習慣のある職業の人は手荒れを起こしやすいです。手荒れが起こる時は皮脂が失われて乾燥した状態のとき。乾燥した肌はバリア機能が低下します。手指衛生習慣を見直して、手荒れを予防する方法について解説していきます。
手荒れが起こることによる弊害
・手荒れのところに黄色ブドウ球菌などの細菌が定着しやすくなる
・乾燥した皮膚が剥がれ落ち、空気中に飛散し、環境を汚染する
・角質バリア機能が低下し、血液媒介感染症(B型肝炎など)の感染リスクが増加する
・ヒリヒリするなど皮膚に刺激がくるので、手指衛生をしなくなる
手荒れを予防する方法
ポイントは手指の乾燥をどのようにケアできるかです。皮膚の水分保持機能の低下を防いで角層バリア機能を正常に保つことが大切です。
1. 手洗いの時に気をつけること
手に優しい石けんを使用する
人の皮膚は個人差が多いです。敏感肌の人は特に気をつけて選ぶ必要があります。皮膚への刺激が少ない洗浄成分の手洗い剤を使用しましょう。
温水で手洗いをしない
温水は皮膚の乾燥を助長させます。頻繁な温水による手洗いは肌の必要な皮脂の喪失につながります。
手を拭く時は強く擦らない
強く擦ると手の表層の組織を傷つけます。ペーパータオルで優しく押し付けるように水分を拭き取ります。
目に見える汚れがない場合はアルコール消毒剤を使用する
目に見える汚れは石けんと水での洗浄が必要ですが、目に見える汚れがない場合はアルコール消毒剤を使用しましょう。
手洗いと手指消毒は同時に実施しない
手指衛生は石けんと水での手洗いか、アルコールによる手指消毒のどちらか片方で十分です。両方行うことは肌への負担をかけることになります。
2. 手指消毒(アルコール製剤使用)の時に気をつけること
手指用のアルコール製剤は保湿剤が複数種類配合された製品を選択しましょう。
3. ハンドケア剤を使用
ハンドケア剤は手荒れの有無に関わらず、日頃から使用する習慣をつけましょう。ハンドケア剤には保湿機能を補う保湿剤と手に皮膜を形成してバリア機能を高める保護剤、これらふたつの機能を併せ持った製品が販売されています。ハンドケア剤は個人使用、あるいは複数人で使用する場合はポンプ式がお勧めです。
手指衛生習慣の見直しは手荒れを予防することができます。手荒れがひどい場合は皮膚科を受診して治療をする方が早い改善になります。
第2種滅菌技士/第1種歯科感染管理者/歯科衛生士
長谷川雅代