歯科診療に欠かせないグローブ。歯科診療に関わらず、医療現場に欠かせないのがグローブです。グローブの目的は主に血液や体液の感染性物質に触れるとき、体液が付着している(可能性を含む)汚染された器材に触れるとき、薬剤の調合作業や医科では抗がん剤を扱う際にグローブを着用します。
グローブは患者さんごとの交換を必須とし、グローブの再利用やグローブのままでの手洗いは禁止されています。1日診療をするとグローブの消費量は相当な枚数になります。グローブの適切な使用は院内の清潔不潔はもちろん、医院の経費にも直結します。今回はグローブの使用方法を見直してみましょう。
院内でグローブの着用ルールを決定しておくことにより、グローブの着用基準を作ることができます。着用の有無の決定は個人の見解ではなく、理由と一緒に認識しておくと着用するかどうかを迷わなくなります。
診療する直前にグローブを着用する
患者さんをご案内する際にグローブの着用はしません。カルテを持つ手は素手です。患者さんをユニットにご案内し、基本セットに触れる前に手指衛生です。そしてグローブの着用をします。
患者さん目線で考えると、ご案内の際のグローブは「そのグローブはいつから着用しているの?」と思われてしまいます。グローブを取り替えていたとしても、その事実を知るのは自分だけです。
手指衛生をして、患者さんの目の前でグローブを装着するほうが患者さんも安心です。
器材を片付ける際にグローブを着用する
患者さんに使用した器具は血液のように明らかに体液が目視できるとわかりやすいですが、多くは唾液の付着です。患者さんに使用した器具は目に見える明らかな体液がなくても“体液が付着している可能性がある”と考えてグローブを着用し、片付けをおこないます。
共有物にはグローブをしない
グローブの着用シーンは主に“体液に触れるとき、体液が付着している可能性がある時とき”と考えます。体液がないところにはグローブを着用しません。カルテや電話、パソコン関係、引き出し、ドアなどの院内での共有物はそのものに体液はついていないはずです。よって、これらに触れる時にはグローブは必要ありません。
事務作業にもグローブは不要です。受付や院内での事務作業でのグローブ着用は長時間になる可能性もあります。その結果、手指衛生のタイミングを逃すことや、グローブ内での微生物の増加が懸念され、自分はもちろん、他者への感染リスクを高める可能性が懸念されています。
2020年の世界的な感染症のパンデミックでグローブの需要と需給のバランスが不安定になりました。以前よりグローブの価格も高騰しています。グローブの使用目的によって材質を見直すことはグローブの適正使用にもつながります。
グローブの種類と材質
グローブの用途には、主に手術時や外科処置の際に使用する手術用グローブ(滅菌グローブ)、検査・検診用グローブ(滅菌/未滅菌)、多用途グローブがあります。それぞれ国内外の規格があります。
グローブの材質にはラテックスやニトリル、プラスチックグローブやニトリルとプラスチックグローブの利点を掛け合わせて価格を抑えたハイブリットグローブと呼ばれる材質のものがあります。それぞれのグローブには特性、利点、欠点がありますので、使用目的に応じて使い分けると良いでしょう。
院内で清潔不潔の認識を共通する大切さ
院内でグローブの着用を当たり前のように思うのではなく、「グローブが必要な場面か」の共通認識を持ち合わせることが大切です。グローブの着用は手指衛生の代わりではありません。グローブをすることが身の安全を守るのではなく、グローブが不要な場所では着用せずに石けんと水の洗浄法、またはアルコールでの手指消毒を適時に行うほうが清潔を維持することができます。
医院のルールをつくる
例えば当院のルールですが、滅菌バッグに入っているものは素手で扱います。治療道具を準備する際、器具を引き出しから取り出す時も素手で行ないます。理由は器具に体液は付着していないからです。体液が付着していないものはグローブは不要ということをメンバーは周知しています。
ただし、滅菌物を配布するとき、治療道具を取り出し準備するときは必ず手指衛生を行なっています。消毒滅菌室の入り口には手指用アルコール製剤はあり、人の動線を考慮して院内の数箇所に手指用アルコールが配置してあります。グローブの着用とアルコールの使用場面を理解しているとグローブの適正利用が可能になります。
また、グローブは2種類の使い分けをしています。操作性を求めないもの、例えば簡単な印象採得、石膏を流したり、使用済みの器具を片付ける際に使用するグローブは安価なプラスチックグローブ、施術をする時に着用するグローブはニトリルグローブやラテックスグローブです。
院内にグローブの着用ルールがない医院は作成をお勧めします。ルールがあることで、メンバーは迷わなくなります。