感染管理の基本は手指衛生です。石けんと水での洗浄法、あるいはアルコールを用いた擦式法のどちらかで手指を清潔にするのが基本です。手指衛生のエラーが起こりやすい部位に指先と爪周囲があります。
最近ではネイルを許可している医院も増えているようです。
歯科衛生士や歯科助手がネイルをすることについては賛否があります。見た目の自由と衛生面・職業倫理のバランスをどう取るかがポイントになります。
おしゃれと身だしなみ
おしゃれは自己表現です。自己表現を個性として認められる場合もあります。医療現場では個性よりも患者の安全や安心を第一優先にすることが大切です。
身だしなみを整えることは見られる側(相手)への配慮です。患者に安心感や信頼感を与えることは何より大切です。
ネイルは身だしなみの範囲として考慮するのか、おしゃれと判断するのかを考える必要があります。
ガイドラインはどのようになっている?
CDC、WHOの双方のガイドラインでは人工爪に対しては禁止、爪の長さに対して制限の勧告があります。人工爪禁止の理由は感染リスクを高めるためです。
CDC(米国疾病管理センター)の見解
「医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン」では
人工爪の禁止: 人工爪やネイルエクステンションは、手洗いやアルコールベースの手指消毒後でも病原体を保持しやすく、感染リスクを高める可能性があります。 そのため、感染リスクの高い患者と直接接触する医療従事者は、これらの使用を避けるべきと記載があります。
自然な爪の長さ制限: 自然な爪も短く(6.35mm以下)保つことが推奨されています。 これは、爪の下に病原体が蓄積されるのを防ぎ、手指衛生の効果を高めるためです。
WHO(世界保健機構)の見解
「医療における手指衛生のためのガイドライン」では
医療従事者に対して人工爪(アクリルネイルやジェルネイルなど)の着用を禁止しています。 また、自然な爪も短く(6.35mm以下)保つよう推奨しています。
実際はどれぐらい汚れが残るか?
筆者が実際に手洗いチェッカーを使用してから手指衛生を行なった例です。筆者はネイルをしていませんが、爪まわりの汚れが落ちてないのがわかります。ネイルをしている指であればこれ以上に手指衛生の難易度が上がります。
グローブ破損のリスクもある
医療現場では施術時にはグローブを装着しますので、患者の口腔内に装飾された爪の指がダイレクトに入ることはありません。しかし、長い爪やアートがグローブを破ってしまう可能性があります。歯科医療器具は鋭利なものが多く、気づかない間にグローブが破れていることも起こります。爪に装飾をしていることで、さらにリスクが上がります。
医療現場として考察する
患者は“見える部分”で評価をします。医院でどんなに器具の処理を徹底的に行なっていても院内に埃やゴミが落ちていることで患者に与える心象は変わります。特に医療現場では、患者が敏感になっていることが多く、判断が主観的になりがちです。ある人には清潔に思われても、別の人には「不衛生」「不適切」と感じられる可能性があります。
医療現場として、「患者の安心・安全を第一に考える」のであれば見た目よりも衛生が優先されるべきと考えます。
まとめ
看護の現場では感染リスクを高めてしまう、ケア時に患者を傷つけてしまう、ネイルを好まない患者がいる、異物混入のリスクがある、という理由で基本的にネイルを禁止しているようです。
手指衛生を効果的にするためには長い爪は手指衛生が十分に行き渡らないこと、人工爪も同じく爪まわりに汚染が残りやすく手指衛生の難易度が上がることからネイルは勤務外の時間に楽しむことをお勧めします。
また、フットネイルであれば、医療従事者でも自由に楽しむことができるのでお勧めです。