使用済みの器材を洗浄し、消毒か滅菌を施してまた次の患者さんに使用する・・・。ディスポーザブルの製品も多くありますが、器材の再生利用は必ず行われます。
歯科の機械、器材は多くありますので、製品や器具によって処理方法を変えることが求められます。機械、器材の特性を知り正しく処理をすることが必要です。
再生利用する際の消毒と滅菌はどのように使い分けると良いか、無駄なく効率的に処理するための考えかたを解説します。
消毒と滅菌の目的
歯科医療における消毒と滅菌は“ウイルス”に対応することを目的にすることが多いです。特に消毒においては消毒薬によって微生物スペクトルといって対象とする微生物に有効な薬剤を選択する必要があります。滅菌はウイルスを含むすべての微生物に対して効果がありますが、院内すべてのものを滅菌することは現実的でないこともあります。すべてのものを滅菌しても間違いではありませんが、器材の中にはウイルスに効果があれば消毒で済ませて良い器材も存在します。
消毒と滅菌はどちらかで良い
感染対策を入念にしたいことが目的で消毒をおこない、さらに滅菌をおこなっている医院があります。消毒と滅菌は基本的にどちらか一方を行えば良いです。
手洗いで器具を洗浄しているケース
器具を手洗いで洗浄している医院は洗浄後に消毒で完了する器具か、滅菌で終了する器具なのかを手洗い後に分別します。薬液消毒を選択した場合にはさらに滅菌の選択はありません。
医療用洗浄機で器具を洗浄しているケース
最近では医療用の噴射式器具洗浄機(ウォッシャーディスインフェクター:WD)を導入されている医院も多くなってきました。WDもさまざまな種類がありますので、確認するのは熱水消毒ができる機能があるかどうか。熱水消毒ができるWDをお使いの医院は器材をWDが終了した時点で再生完了にできる器具があります。滅菌をする器具をここで分別します。熱水消毒の機能がないWDであれば手洗いと同様に考えます。
必ず滅菌が必要な器具
手洗い、熱水消毒ができるWDを使用しているか洗浄方法は関係なく、治療器具には必ず滅菌が必要なものがあります。滅菌か、消毒かを考える方法が汚染された器具に付着している体液の種類ではなく(血液がどんなについていても、たいして汚れていないように見える器具においても)その器具はどこに使用する器具かで滅菌か、消毒の判断をしていきます。
必ず滅菌が必要な器具は“体の組織の中で使用する器具”“血管内に挿入する器具”“体内の無菌領域で使用する器具”です。具体的な例をあげるとプローブ(歯肉溝、歯周ポケット内に挿入します)、根管治療用のファイル類(根管は組織内と考えます)、外科器具などが挙げられます。クリティカル器具と呼びます。
いっぽう、熱水消毒のように熱処理優先が望ましいですが、器具自体は粘膜には触れますが、体の組織の中には入らないので、必ずしも滅菌が必要でない器具に咬合紙ホルダーや印象用トレー、口角鉤、レントゲンインジケーターなどがあげられます。これらはセミクリティカル器具です。
薬液消毒して滅菌するは不要
全器材を洗浄し熱水消毒を行い乾燥までおこなうのがWDの工程です。よって、WDにて洗浄が行われた器具はすべてが熱水消毒が完了した状態になります。ですからここからさらに滅菌をする器材の選択が起こります。(熱水)消毒して滅菌の流れです。
しかし、“手洗いをし、薬液消毒をして滅菌”の工程はありません。滅菌する必要があるのであれば、洗浄後、そのまま滅菌です。滅菌はすべての微生物に対応しますので消毒は不要です。
まとめ
基本的な選択は消毒か滅菌かどちらか一方の考えです。清潔にしたい気持ちであれば、洗浄をしっかりとおこない、そして消毒か滅菌かを選択します。WDの熱水消毒でない限り、(薬液)消毒してさらに滅菌をおこなうことは不要です。薬液消毒も経費がかかりますので、見直してみましょう。