光学印象が普及し、導入している歯科医院も多くなりました。印象がデジタル化し、技工指示書もメールで送信する歯科医院が増えています。しかし、アルジネートやシリコンを使用して印象するケースはまだまだなくなりません。みなさんの歯科医院では、印象体の消毒はどうしていますか?
また、顎間記録をしたバイト材、患者の口腔内に挿入した補綴装置についても考えます。
口腔内は生体内でも常在菌や微生物が多く存在している部分です。口腔内に一度挿入された印象体、バイト材、補綴装置には口腔微生物が付着しています。
特にアルジネート印象体は、シリコン系ラバーの印象体に比べて、性質上、口腔内微生物が封入される危険性が高いです。
印象採得の時、血液やプラークが付着していたという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。確実な洗浄と消毒をしないまま印象体に歯科用石膏を注入すれば、口腔内微生物は容易に伝搬するので、石膏模型は不潔なものとして取り扱う必要があります。
患者の口腔内で試適した補綴装置や補綴物なども同様で、洗浄と消毒をしないまま技工所に戻すのはあまりにも無防備です。
補綴歯科治療の院内感染対策を考察する
補綴歯科治療時の感染対策の考慮するべき点として
①口腔内に挿入した器具や材料
②口腔内に挿入した術者の手指
③印象体や顎間記録したバイト材の取り扱い
④口腔内に挿入した補綴装置、補綴物
が挙げられます。
①口腔内に挿入した器材は器材再生をする、②口腔内に挿入した手指はその都度グローブを外して手指消毒すれば対処できます。
しかし、③④印象体やバイト材、口腔内に挿入した補綴装置、補綴物については、洗浄、消毒がその精度や材質に影響を及ぼす。という視点から、確実に実践されていない現状があります。
歯科技工所(院外)の感染対策はどうだろう?
印象体や石膏模型、一度患者の口腔内に挿入した補綴装置、補綴物は、診療室から運び出され、歯科技工士の元へ運搬されます。
歯科技工所は、院内に併設されている歯科技工室、または独立した歯科技工所に外注する形で連携をとっている所が多いと思います。
歯科技工士に聞き取りをしたところ、歯科技工所でも、集まった印象体や石膏模型、患者の口腔内に挿入された補綴装置などは、独自に感染対策を施している所もありました。しかし、それらは歯科医院内で消毒されているものだと思い込んでいる歯科技工所もありました。
歯科技工所も試行錯誤が伺えますが、感染対策のない技工所もあります。様々な事情があると思いますが、感染対策の面で、歯科医院との連携が不十分だと言えます。
口腔内に挿入した印象体やバイト材、補綴装置の取り扱い問題点の一例
歯科医院内、歯科技工所で考えられる問題点をまとめてみると以下のようになります。
現状を知る事から始めよう
歯科医院の感染対策と歯科技工所の感染対策を、お互いが目にする機会は少ないと思います。だからこそ、双方で印象体や石膏模型の洗浄や消毒状態の情報提供や確認が必要になります。
日本歯科技工士会は、『歯科界では、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士の3職種が、歯科医療という狭い領域での業務に携わっています。感染対策について3職種の連携は必須です。』としています。
また、イギリスの歯科技工士への調査ではありますが、歯科医院から受け取った印象体は、歯科医師によって消毒されていると、6割以上の技工士が信じていた。という文献もあります。
『どうする事が正解なのか』を導き出すために、現場の実際を踏まえて、詳しく掘り下げていきます。
見直しませんか?印象体の消毒プロトコル②ー臨床現場の実際ー
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