感染症の人への対応

ここ数年で“感染症”の恐ろしさを私たちは身を持って経験しました。でも、感染症は無くなることはありません。感染症とは共に共存しながら生きていきます。だからこそ、正しく恐ることが大切です。
歯科医院において気をつける感染症には血液媒介感染症の『B型肝炎』『C型肝炎』『エイズ』などがあります。
もし、皆さんの医院で診察希望の患者さんが問診で感染症のところに印をつけてきたら、どのような対応をしますか。もしも、まだ「感染症の患者さんがやってきた!」と『感染症患者用』の器具を準備していたり、消毒液を準備しているようでは時代おくれです。

スタンダードプリコーションの考えかた

スタンダードプリコーション(標準予防策)の大切なところは問診での申告の有無、確認できる感染症の有無に囚われず、「すべての人に適応される考え」というところです。もっと、言葉を柔らかく、簡単にしてしまうと「誰もが、何かしらの伝搬性の病原体を持っている(可能性がある)」と、いうスタンスで考えます。
例えば問診で「B型肝炎」と自己申告があったという事実があるだけです。捉え方としては問診では何も申告のない目の前の患者が、実は感染性の病原体を持っている可能性が十分にあるということにも解釈できます。すべての感染症についてのスクリーニング(検査)をするのは不可能です。ですから、予めすべての人が「感染症ありき」で考えると良いのです。

感染対策は病原体が存在するところを知ること

病原体とは病気を起こすもとになる小さな微生物のことを言います。つまりはウイルスや菌などのことです。それらの存在するところは湿性生体物質(しつせいせいたいぶっしつ)と呼ぶ「血液・体液(汗は除く)・粘膜・傷のある皮膚・分泌物・排泄物全て」です。生物から出るすべての液体のイメージです。私たちの扱う口腔は唾液や血液が常にあるところで、粘膜にも覆われています。常に何かしらの病原体が潜んでいる可能性のある場所での処置をいつもしていることになります。
感染対策はそれらが付着しているリネン、ガーゼ類、器具、全てが感染物として取り扱うことです。だから 歯科医療現場ではすべての患者に対して、使用した(体液の付着した)器具は滅菌や消毒を施します。滅菌が不可能な器具や、湿性生体物質が付着している可能性のある場所にはウイルスに効果がある消毒薬を用いて感染対策を行うことを基本にします。このように対処することによって、どのような感染症があっても感染対策ができます。器具を分けない理由です。

 

未知の感染症にもどんな感染症にも対応できる方法

CDC(アメリカ疾病管理予防センター)がこのスタンダードプリコーションを提唱したのが1996年。それまでは感染症の有無で患者さんを判別していた時期もあります。でも、時代は変わりました。人は誰もが感染症を持っている可能性を前提に医療提供することがグローバルスタンダードです。グローバルスタンダードな考えで感染対策を行うことが大切です。