消毒用アルコールの効果を理解しよう!

アルコールワッテとかSPガーゼとか、アル綿とか・・・。医院によって様々な呼び名をもつアルコール綿花。ユニットのサイドテーブルの脇に常備してますか?アルコールの用途を効果も含めて考えてみましょう。

 消毒用アルコールとは

一般に消毒用アルコールといえば、エタノールやイソプロパノ-ルがその代表。ほぼ同等の消毒効果を示します。イソプロパノールの方が安価ですが、毒性はエタノールより2倍程度高く、手指消毒に70vol%イソプロパノールなどを用いると、エタノールより脱脂作用が手荒れが生じやすくなります。安全性の観点からもエタノールの使用が勧められます。

消毒用エタノールには、飲用される酒類と同様に酒税相当額が課税されます。そこで、エタノールにイソプロパノールを3.7vol%添加することにより、飲用不可能となり免税された安価な消毒用エタノールが販売されています。消毒用エタノールIP(IPA)と記載されている製品です。

消毒用アルコールは消毒剤としては中水準(中域)消毒剤となります。皮膚や手術部位の消毒、医療器具の消毒などに用いられています。粘膜には使用できませんが皮膚は使用可能です。

消毒用アルコールの特性

消毒用アルコールには揮発性・タンパク質凝固・引火性があります。歯科臨床現場で使用する際にこれらの特性を理解しておきましょう。

揮発性

アルコールは揮発性が高く、短時間で蒸発する特徴があります。この特性によって、水分を嫌う機械類の消毒の使用には適していることが多いです。(使用の際には必ず取り扱い説明書で確認してください)洗浄できない機械類にはアルコール綿での清拭が向いています。またコンポジットレジンなどのシリンジ形状に入った薬剤は口腔内に入る先端部分は患者さんごとに交換できても本体は材料や薬剤を使い切るまでは繰り返し使用になりますので、こちらも使用後はアルコール綿での清拭の選択になります。

タンパク質凝固

アルコールにはタンパク質凝固の特性があります。血清や膿汁が付着したところを直接アルコールで清拭すると、きれいになったように見えてもアルコールでそれらを凝固させてしまうことになります。よって、アルコールを使用する場合は血清や膿汁が付着していないか、付着している場合は水洗してからアルコールを使用することが大切です。

引火性

消毒用アルコールは蒸発しやすく可燃性蒸気が発生します。歯科領域では電気メスなどの使用も頻繁です。火気のある場所でのアルコールの使用には十分気をつけましょう。こちらは手指衛生の際の手指用のアルコール使用の際にも同等です。

アルコール綿について

歯科ではアルコール綿で器具を清拭する場面が見受けられます。昔からの習慣で使用した器具をアルコールで清拭して元に戻すような光景がまだ根強く残っている医院もあります。先述したアルコールの特性を知り、現在のアルコールの使用方法に改善点がないかを考えてみましょう。

アルコール綿の作り置き

基本的にアルコール綿花は作り置きはお勧めしません。日本歯科医学会監修の「院内感染対策実践マニュアル」には容器内にアルコールが十分量あれば1週間程度使用可能と記載されていますが、容器の形態、使用状況によりエタノールの蒸発が懸念される際は1日ごとの交換が望ましいとも記載されています。アルコールの蒸発を考慮すると1日分ずつ使用する量に対してアルコール綿花を作ることが安全です。ちなみにアルコールの継ぎ足しはしてはいけません。ちなみに綿花に対するアルコール量は脱脂綿1gに対してエタノール(イソプロパノール)5mlをめどに作成します。

アルコール綿は使用する際に準備する

このように考えていくと、診療中にアルコールを用いて清拭する場面はそれほど多くないと筆者は考えます。患者さんに使用したほとんどの器具は洗浄し消毒あるいは滅菌処理を行うので、アルコールで清拭して元に戻すのは一部の機械類です。そうなるとアルコール綿は使用する際に準備することが経済的でもあり、揮発性のことも考えなくてすみます。

①個装のアルコール綿を準備しておく

個装のアルコール綿が販売されています。コスト的には割高ですが、使用する際のみ開封するので、揮発性の問題はありません。

②アルコールと綿花(不織布)を別々に準備しておく

アルコールと綿花(不織布)を別々に準備します。使用する際に綿花をアルコールを浸してその場で使用するので、この方法も揮発性の問題は回避されます。アルコールを入れるボトルにはアルコールの保存に不向きな素材のものもあるので、ボトル選択には注意をします。

 

ユニット消毒にアルコール消毒は効果的か?

患者さんの治療が終わった後、アルコールでユニット消毒をしている医院を見受けます。消毒用アルコールの特性に加えてユニットに使用する場合は考慮する必要がある点があります。それはユニットの素材です。歯科用のユニットは合皮で作られていることがほとんどで、アルコールでユニットを清拭していると色褪せてきます。ユニットの変色です。ユニット素材を考慮すると消毒効果のあるアルコール濃度での使用ができません。ユニットでのアルコール消毒は血液が付着した部位のみを洗浄し、消毒を行うスポット消毒の方法をとります。

さらにアルコール消毒をユニットなどの広範囲に使用するのは蒸気の発生も懸念されます。ユニット消毒方法については消毒範囲や使用薬剤について、医院で話し合う必要があります。

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アルコール消毒を考え直そう

歯科医療現場で消毒用アルコールの必要場面を再考してみましょう。歯科器材で洗浄できるものは再生できるものが多いです。医院の設備環境によって、熱水消毒できるものは熱水消毒、あるいは滅菌ができるとそれが何よりも清潔ですし、アルコールの正しい使用方法でアルコールの消費量が減り、医院のコストカットに繋がります。